下顎奥歯のインプラント治療症例(70代:女性)
既存インプラントの上部構造を製作して咬合を回復した症例
▼70代女性の患者様です。食事がしにくいということでご来院されました。
初診時の口腔内
お口の中を拝見すると、右下と左下の奥歯の部分にインプラントをされているのですが、土台だけがあり、被せ物が無い状態でした。そして、その土台も大きく損傷し変形していました。インプラントについて聞いたところ、5年以上前に他の歯科医院で行ったそうです。
被せ物に関しては2年位前から外れてしまったそうですが、そこの医院が閉院してしまったため、そのまま放置してしまったそうです。その間、土台のみで食事をし生活していたため、大きく土台が損傷、変形してしまったことがわかりました。
被せ物もなく、土台も大きく削れてしまっています(特に右下)。そのため、咬み合わせの高さが全体的に大幅に低くなっていました。
治療計画の立案
治療の計画としては、仮歯を装着して大きく失った咬み合わせの高さを、元々これくらいであっただろうと思われる高さに上げて(上下ともに)、しばらくその状態で食事・生活してもらい(慣れてもらう)、感想を聞きながら高さの微調整を行います。その後、咬み合わせの位置、高さが安定したところで最終的な被せ物を作る、という流れに決めました。
インプラントを作る会社(メーカー)はたくさんあり、多くの種類があります。こちらの患者さまは、当院で扱っているインプラントとは異なるものでした。インプラントのメーカー・種類をレントゲンの特徴等から特定し、そのメーカーと連携しながら治療の計画を打ち合わせしました。
インプラントの構造と治療手順について解説
インプラントは骨に埋まっている部分です。土台とインプラントは分かれていて、ネジで締めてインプラントに土台を固定します。その後、その土台の上に被せ物(人工の歯)を入れて完成します。
インプラントの土台を装着
インプラントの土台は大きく損傷しているため、土台ごと外して、土台から新しく作り直さないといけません。しかし、2年以上にわたり土台だけで食事・生活をしていたことで、インプラントと土台を固定する部分や土台のネジ穴が変形し、土台が外せない所があることが検査で判明しました。
右下の手前から2本の土台は大きく損傷していますが、土台が動くため、インプラントから外すことが可能でした。それ以外の右下の奥の2本、左下の3本は検査の結果土台が外せないことが判明したので、外さずにそのまま被せ物を作ることにしました。右下の一番奥のインプラントに関しては、土台の高さが無く不安定なことと、咬み合わせの高さの関係で被せ物を作らずにそのままにすることにしました。
仮歯で咬み合わせの高さを上げるため、外せることのできる右下2本の土台を外し、新しい土台を装着することにしました。1本の土台はすぐに外せましたが、もう1本はインプラントと土台を固定するネジのネジ穴が壊れてしまっていたので、削って溝を作り、マイナスドライバーで外しました。
新しい土台をインプラントに固定しました。続いて、右下、左下に仮の歯を作りました。最低限必要な土台の高さ、仮の歯の高さの分、咬み合わせを上げました。仮の歯の噛む面の形は、顎の動きが不安定なため、どの位置でも噛めるように、平らな形にしています。上の入れ歯の高さも調整し、その日の治療は終わりました。新しい咬み合わせに慣れてもらいます。
仮歯(入れ歯)での調整
次にご来院された際、咬み合わせは特に気にならなかったとのことでした。その日は上と下の歯の高さ・角度を理想的な状態にするため、上の被せ物を外し、入れ歯と一体化した仮の歯を作りました。
再び、新たな仮歯で一定期間生活・食事をしていただき、現在の咬み合わせで問題がないとのことでしたので、最終的なインプラントの被せ物を作ることにしました。
上部構造の製作
右下の上部構造から着手しました。
被せ物を製作する技工士にインプラントの位置を正確に伝えるため、歯型を取る専用の器具をインプラントに装着し、歯型を取りました。法人内の技工士と最終的な土台と被せ物を相談し、コンピューター上で設計しました。
完成した土台と、セラミックの被せ物です。
問題なくお口の中に入りました。
左下も作ります。土台は外せないので、そのまま状態で必要最低限土台の形を整えて、歯型をとりました。真ん中と右側の写真が完成したセラミックの被せ物です。
左右の上部構造を装着して治療完了
左右にしっかりとしたセラミックの被せ物が入り、患者さんは硬い物も食べれるようになったと大変喜ばれておりました。今後はまだ仮の歯になっている上の歯に被せ物を作っていきます。
年齢・性別 | 70代 女性 |
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治療期間 | 3ヵ月 |
治療回数 | 8回 |
リスク・注意点 | ・今回の場合、インプラントと土台が他の医院で行われたものであるため、治療が困難になり中断する可能性があります。また治療後も、被せ物の長期の維持が困難な可能性があります。 ・インプラントの感染の可能性があります。 ・以上2点のような状態になったとしても、他院で行われたインプラントである為、当院では一切の責任を負いかねます。また、保証もできません。 |