精密根管治療による抜歯回避の症例
抜歯リスクの高い歯を精密根管治療によって保存した症例
▼50代の男性です。右下の奥歯が咬むと痛いということで来院されました。
診査の結果、右下1番奥の歯根に病気ができており、歯を支えている骨が大きく失われていました。根の病気は大きく(レントゲン画像:緑色の部分)、根が折れている可能性も考えられました。患者様に現在の歯の状態を説明し、歯を残して根の治療をするか、抜歯して入れ歯やインプラントを行うか、それぞれのメリット・デメリットを説明しました。
患者様はできるだけ歯を抜かずに長持ちするような方法で治療してほしいと希望されました。そこで精密な根の治療を行い、保存を図ることにしました。
CTによる精密検査
CTを撮影しました。根は手前と奥の2つあり、どの方向から見ても根に大きな病気ができて、骨が失われていることが分かりました(緑色部分)。
CT(上)からの画像をみると、根の中に薬がしっかりと入っておらず、隙間が見られました(黄色○)。この隙間に細菌が繁殖し、根の病気ができてしまったと予想されました。
現在入っている薬も細菌感染しているので、薬を取り除き、新しい薬を入れる必要がありました。また、病気の広がり方、大きさから、根が折れている可能性もあり、折れている場合は抜歯になることも患者様にご理解していただき、治療を始めました。
根管内部の清掃
ある程度取った状態で根の中を精査すると、手前と奥の根をまたぐ神経の入り口が発見されました。
歯根部分のひび割れを発見・修復
また、手前の根の中にひび割れがありました。患者様に説明し、このまま治療を続けても予後が悪いかもしれない事をお伝えした所、患者様は治療を続けることをご希望されました。ひび割れの中には細菌が存在するため、可能な範囲でひび割れを削り、プラスチック樹脂で修復しました。
根管充填
根の先端から、隙間ができないように顕微鏡で見ながら薬(MTAセメント)をしっかりと詰めました。
根管治療後のCT画像
治療後のCT画像です。どの方向から見ても薬が緊密に詰まっていることが確認できます。
かぶせ物の製作
根管治療後は土台をたてて形を整え、被せ物を作るための精密な歯型をとりました。
完成したセラミックのかぶせ物です。(左)表面/(右)裏側
かぶせ物を装着して治療完了
セラミックのかぶせ物を装着し、咬みあわせを調整して治療完了です。
患者様は痛みなく食事ができようになりました。また元々の銀歯から白い被せ物になり、非常に喜んでいただけました。
今後は根の病気で失われた骨が再生することを期待しながら、お口全体の歯の定期的な清掃でいらしていただくことになりました。
年齢・性別 | 50歳 男性 |
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治療期間 | 3ヵ月 |
治療回数 | 6回 |
治療費 | 357,500円(精密根管治療275,000円、セラミックの被せ物82,500円)(税込)+根管内洗浄、薬交換1回5,500円(税込) |
メリット | 【精密根管治療のメリット】 ・歯を抜かずに残せる可能性が高くなる。 ・歯が長持ちしやすくなる。 【セラミックの被せ物のメリット】 ・見た目が美しく、自分の歯の色に近い自然な白さを再現しやすい。 ・精度が良く、虫歯が再発しにくい。 ・金属アレルギーの心配がない。 |
リスク・デメリット | 【精密根管治療のリスク・デメリット】 ・外科処置が必要となる場合がある。 ・骨が再生するには時間がかかる。 ・治療途中に歯が割れたり、保存が不可能と判断した場合は抜歯になることもある。 【セラミックの被せ物のリスク・デメリット】 ・歯に優しい強度のため、被せ物がまれに割れることがある。 ・金属よりも歯を少し多めに削る必要がある。 |